『教育って二度手間だよね』
半年くらい前に、ある起業家の人に『ITエンジニアでない人がエンジニアになるための教育を行うことについて』どう思うか聞いてみたことがある。
その人いわく「教育って二度手間だよね。それならSaaSとか使って直接ビジネスに貢献するものにお金使った方がいいんじゃないかと思う」というような率直な意見をいただいた。
あまりにドライな意見だったので、当時の僕はちょっとムッとしたけど、いろいろと考えさせられる話だったなーと思う。
"二度手間"の意味するところはおそらく、会社の売上に貢献するということがゴールだとすると、教育を受けただけでは直接的には貢献できず、そこからどうやって売上に貢献していくか考えなければならないというステップがあるからだと理解した。
社員教育だけが業績を上げる方法ではないし、もっと簡単な方法があるだろう。と言いたかったんだろうと。
質問に答えた人は経営者なので、そういう発想になるのは分かる。
そして教育というのは教える側も教わる側もそれなりにコストがかかるし、もしかしたらムダになる可能性だってある。教わり終わった途端に転職してしまったり…。
詰まるところ、社員教育することによって会社の業績を上げようとすることの何が難しいかというと、人依存になっている点に尽きると思う。
社員がどんなに頑張って教育を受けても、仕事に対するやる気がなかったらスキルを仕事に生かそうとしないだろう。仕事が楽しいと思うには、楽しいと思える環境が必要だ。例えば一緒に仕事をする人が親切で、自分がやったことに対してお客さんも喜んでくれて感謝してくれる環境。
でも実際にはそんな恵まれた環境ばかりではない。恵まれた環境であるためには様々な条件が"恵まれている"という閾値を超えていなければならない。しかもその条件や閾値は人によって違う。だから社員教育に注力=業績UP/経費削減とはなかなかいかない。
ちょっと話は変わるけど、僕はRPAを教える仕事もしている。相手はITエンジニア未経験の人が多い。
何度も講師をしていて実感するんだけど、テクニック的なものはだいたい習得してもらえる。何度かロボットを作っていればコツが分かる。僕はロボットを作るまでの助走をつけるために後ろからそっと押しているだけで、自走し始めたら僕の仕事はほぼ終了なのである。
多少センスの問題はあるかもしれないが、大体の人がロボットは作れる。
ただ問題はそれからで、"ロボットが作れる人"が現場で活躍できるとは限らない。その人が活躍するにはいろ~んな条件がうま~く噛み合わなければダメだ。
分かりやすく例えられるか怪しいけど、
変数=人、式=取り組むべき課題
とすると、業務改革が成功する=数十個の変数を持つ連立方程式の解を出す
のと同じだと思ってる。
AさんとBさんとCさんがいて、業務aのフローの整理ができる。
DさんとEさんがいて、業務aの新しい業務フローの周知ができる。
FさんとGさんがいて、RPAを使うためのインフラ整備ができる。
AさんからHさん(決裁権を持つ人)にプレゼンし、予算が下りる。
…みたいに、業務改革が成功するには、成功するために課題洗い出しとその課題をクリアするために必要な人材を揃えなければならない。知見はあっても人格的に難ありな人もいたりするから厄介だ。
業務改革成功のカギは結局"人"と"お金"だ。
ただ、人を動かすことができれば、僕の経験上お金の問題はたいてい何とかなっている。
業務改革のためにまずはキーとなる社員にRPAを覚えてもらおう!…だけではダメで、その人が活躍できるような体制をしっかり作ることが大切だ。RPAを覚える前のは体制を固めてからでも全然遅くない。
RPAを覚えた人がどういった業務改革に貢献して、どのように業績UP/経費削減をしていくのか。そのイメージはあるか?
教育は手段。"二度手間"にならないようにゴールを見間違えないことが肝心なのだと思う。